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農産物と抗酸化物,
この性質を利用して生姜湿布や生姜うどんなどに利用
H.ショウガ成分の構造と抗酸化
(Zingiber officinale Roscoe)は熱帯や温帯の広い地域で栽培されている
最もポピュラ一な香辛料の一つである。
甘く清々しい芳香と強い辛味が特徴で,飲料,菓子,薬味などに用いられている。
一方,健胃,消化促進,鎮咳などの効果があり,漢方になくてはならない素材でもある。
このように,ショウガは食用と薬用の両機能をもち,
医食同源という言葉に相応しい食品といえよう。
最近の知見
1.ショウガの抗酸化性
香辛料には抗酸化性を有するものが多いことが知られており,
ショウガにも強い活性のあることが報告されている。
藤尾らやLeeらは,辛味成分のショウガオール,ジンゲロン,ジンゲロールに抗酸化活性
のあることを明らかにした。
筆者らも,各種香辛料のリノール酸に対する抗酸化活性をロダン鉄法
やTBA法を用いてスクリーニングし,ショウガの塩化メチレン抽出物に強い活性を認めた。
この塩化メチレン抽出物をシリカゲルカラムを用いて極性の差によって分画し,
各画分の活性を調べた。
その結果,ショウガオールやジンゲロールを含む画分以外にも
強い抗酸化活性を示す区分の存在することが明らかとなり,
新しい抗酸化物質がみいだされる可能性が示唆された。
E.ショウガ成分の化学構造
抗酸化性のみられた各画分の精製をくり返し,
これまでに新規化合物18種を含む34種の化合物を単離して構造を決定した。
構造の特徴によって分類すると,
?ジンゲロール類縁体と?ジアリールヘプタノイドの2つのグループに大別できる。
?のグループの中で最も量的に多い主成分は
〔6〕-ジンゲロール(3)であり,1位に4‐ヒドロキシ‐3‐メトキシフェニル基,
3位にカルボニル,5位に水酸基をもつ炭素10個の直鎖アルカンである。
さらに,炭素数が14個,12個,8個の同族体(l,2,4)もみいだされた。
また,ベンゼン環の置換基の異なる5,6も含まれていた。
3位と5位の置換基に注目すると,5位の水酸基が脱水したショウガオールタイプ
〔2〕,3位が還元されたジオールタイプ
〔3〕,3位と5位の水酸基がアセチル化されたジアセテートタイプ
[4〕,1位が不飽和で,3位とがジケトンであるデヒドロジオンタイプ〔5〕に分類できる。
一方,ジアリールヘプタノイドのグループも3位と5位の置換基の種類によって
同様に5つのタイプに分類できる
ベンゼンの置換基については4‐ヒドロキシ‐3‐メトキシフェニル基をもつ化合物が最も多く,そのほかには4‐ヒドロキシ‐3.5‐ジメトキシフェニル基,4‐ヒドロキシフェニル基,3,4‐ジヒドロキシフェニル基を有する化合物も見いだされた。
以上のように,化学構造の類似した化合物もえられたので,化学構造と抗酸化活性との相関に興味がもたれ,各化合物の抗酸化性を比較検討した。
3.ショウガ成分の抗酸化性
A.ジンゲロル類縁体における炭素鎖長と抗酸化活性化合物1〜4は直鎖炭素数14〜8個のジンゲロールである。
添加濃度100μMにおける各化合物の鎖長が長いほど活性が大きいという結果を得た。
ショウガオールタイプのの化合物(炭素数14〜8個)についても同様に鎖長の長いほうが強い
活性を示した。
抗肝炎活性,プロスタグランジンシンテターゼ阻害活性,抗菌性などにおいても
ジンゲロールの炭素鎖長の違いによって活性が増減することが報告されている。
鎖長の違いによる疎水性の強弱が活性に影響を与えるものと推察される。
B.ジンゲロル類縁体およびジァリールヘプタイドの3位と5位の置換基と抗酸化性
芳香環が4‐ヒドロキシ-3-メトキシフェニル基である[6]‐ジンゲロール類で,
3位と5位の置換基の異なる類縁体(3,9,13,14,15)の抗酸化活性を50〜200μMの範囲で比較した。
この範囲においては濃度が増すにつれて各化合物の活性の上昇が認められた。
同濃度での各化合物の活性を比較すると,ジアセテート(14)≧ジオール(13)≧
ショウガオール(9)>ジンゲロール(3)>デヒドロジオン(l5)の順であった。
ジアリールへプタノイド(l6〜19,22)に関しても同様の傾向がみられ,
ジアセテート(19)が最強であった。
また3位と5位の置換様式が同じであるジンゲロール類縁体とジアリールヘプタノイドとの活性を比較すると,
それぞれ3<l6,9<17,13<18,14<l9,l5<22であり,
ジアリールヘプタノイドのほうが活性が強い傾向にあった。
0.ベンゼン環置換基の異なる化合物の抗酸化性
鎖長,3位,5位の置換基とも同じでベンゼン環の置換基のみが異なる化合物の活性を調べた。
化合物3,5,6および9,1l,l2の活性をそれぞれ比較すると,3>6>5,9>l2>1lであり,活性発現にはフェノール性水酸基が必須であり,オルト位のメトキシ基が活性を増強させると考えられる。
また,ジアリールヘプタノイド(19〜21)の活性を比較すると,
4‐ヒドロキシ‐3‐メトキシフェニル基を有するl9が最も効果があり,
続いて4‐ヒドロキシー3,5‐ジメトキシフェニル基をもつ20であった。
3,4-ジヒドロキシフェニル基をもつ21の活性はそれほど強いものではなかった。
ベンゼン環の置換基が抗酸化活性に及ぽす影響についてはいくつかの報告があり,
フェノール性水酸基のオルト位に電子供与性の置換基が導入されると抗酸化活性が
高められるといわれている。
筆者らの結果もその特性と一致した。
また,コーヒー酸,フェルラ酸に代表されるように,フェノール性水酸基
のパラ位に位置する炭素鎖のベンジル位が不飽和の場合には,
3,4‐ヒドロキシフェニル基をもつ化合物のほうが
4‐ヒドロキシ‐3‐メトキシフェニル基をもつ化合物より高い抗酸化性を示すことが報告されている。
活性を比較した化合物(19〜21)はベンジル位が飽和型であり,ベンジル位の不飽和の有無すなわち違いが活性に影響を与えるものと考えられる。
以上述べたように,ショウガの抗酸化活性の発現には
多くのジンゲロール類縁体やジアリールヘプタノイドが寄与していることが判明した。
活性の強さは炭素鎖の長さや置換基の種類によっても影響を受けることがわかった。
現在のところ,ショウガからさらに新しい関連化合物をいくつかみいだしており,
今後さらに化学構造と活性の相関に関する知見が得られるものと期待される。
おわりに筆者らは食品化学的視点からショウガの抗酸化成分について検討してきた。
天然の抗酸化物質の食品への応用において,それらのもつ色,味,香りは,
その使用範囲を制限する因子になりうる。
たとえば,辛味性の強いジンゲロールやショウガオールなどの実用はかなりむずかしい。
ショウガから得た化合物の中には,辛味がごく微弱あるいは無味でかつジンゲロールやショウガオールよりも活性の強い化合物があり,より広い食品への利用が可能と考えられる。
生体内に生じる活性酸素は種々の疾病や老化をひき起こす原因の一つと考えられている。
われわれが日常摂取する食品に含まれる抗酸化物質が,食品の酸化抑制のみならず,生体内で活性酸素を消去し,さらには疾病や老化に対して予防的効果を発揮する可能性が期待される。